Future World
これからの時代をいかに捉えるか

社会の変化に伴う持続的な海上物流体制の必要性

世界経済の流動性と世界的分業体制の拡大に伴い、世界の産業界が地産地消から最適地生産にその生産活動をシフトさせているのに呼応し、国際貨物量は近年急激に増大している。国際輸送貨物取扱量の大部分を担う海上物流においては、このような産業界の要請に対応した、迅速性と確実性の両面を満たすサプライチェーン構築が必要である。

既存の港湾運営体制からの脱却

しかし、港湾に従事する労働者は年々減少傾向にあり、人とモノの側面から港湾オペレーションの抜本的な改善が求められている。直近の例では、世界的コロナ感染拡大の影響を受け、一部の主要港では熟練労働者の休業によって港湾物流機能が停止する事態も発生している。またコンテナなどの重量物を取り扱う性質上、港湾労働者の作業負荷/リスクは高く、高度なスキルを持つ港湾労働者の確保は極めて難しい課題である。このような「人的リソース」に関わる潜在的リスクに対応するためには、ハードウェア、ソフトウェア双方の提供する新たなテクノロジーを積極的に導入し、港湾労働者の作業環境の改善を図ることで優秀な労働人員を確保する一方、熟練労働者の属人的・経験的スキルに依拠しない、堅牢かつ持続的な港湾運営体制への移行が必要である。

持続可能なスマートポートの実現

港湾労働者のWell Beingの追求

上述の「人的リソース」の不確実性を補完するため、まず港湾労働者の就労意欲を増大させ、離職を食い止めるための環境整備が必要である。すなわち、港湾が安全・安心に担保された魅力的な勤労フィールドとなるためのイノベーションを継続していくことが重要となる。並行して、仮に人的リソースに欠損が生じても、物流オペレーションが停滞しない体制を構築し、港湾労働者がより高次で発展的な作業に注力できる体制を整えていくことも必要である。

サステナブルな運営体制の構築

また他方で、港湾の既存オペレーションを改善するためには、 現在熟練労働者に依拠している運用や実作業に関わる「属人的なノウハウ」をソフトウェア、ハードウェアに取り込みシステム化することが重要である。このシステム化された「属人的なノウハウ」を IoT、DXも援用する形で、人の手でなされていたプロセスでは実現不可能だった、より高度かつ効率的な物流システムに昇華することで、持続可能な「スマートポート」を実現していくことが必要である。

周辺地域及び環境への調和

また、港湾の持続的発展には、港湾に接続する道路/鉄道網といった輸送インフラの整備・改良や、周辺地域からの労働者確保が必要不可欠であり、それらインフラ・リソースの継続的供給元となる近隣自治体/コミュニティとの良好な関係維持が前提となる。上段で提言した港湾作業者の労働環境改善は、結果的にそれら周辺コミュニティにも利益をもたらし、協力関係の深化・拡大にも貢献する筈である。

Vision
Co-Creation(共創)の目的は何か

我々は、港湾物流業界がこれまで達成してきたイノベーションにハードウェア(搬送装置/車両への油圧機器/システムの供給)で貢献してきた。今後はよりソフトウェアに近い分野にコアケイパビリティを有する集団と協業を図り、ハードとソフトが融合した持続可能な「スマートポート」を実現し、社会課題の解決に挑戦していきたい。

我々が目指す「スマートポート」とは、港湾労働者に安全・安心な環境を提供することで危険な作業から解放され、また属人的ノウハウがデジタルの形で集約/統合されることで、作業の迅速化/自動化を実現し、港湾労働者が改善や新たな運用プロセスの創造といった、より発展的な作業に専念できる新たな港湾の姿を指す。

また、水素や電気へのエネルギーシフトによる環境負荷低減に取り組むことで、港湾の安全・安心な環境を整備し、港湾関係者のWell Being増大を図り、また周辺地域・コミュニティの経済的発展と環境保全に貢献する。

今回のコクリエーションにおいて対象とする港湾は、既に効率化された先進国の巨大港から、これから海上物流が増大する開発途上国の新興港まで、幅広く領域を設定する。

Intellectual Capital
未来に向けて活用可能な潜在力は何か

世界に広がる顧客&サプライヤーネットワーク

建設機械、産業機械、船舶機械分野において、長年に渡り、世界を代表する多くのメーカーへの製品&ソリューション提供を通じて信頼関係を築いてきた。また、これを実現する為に、油圧機器の設計・SI・販売で密に連携してきたサプライチェーンや販売店網を有する。港湾物流において革新的な技術をハードウェアに落とし込んだ具体的ソリューションへと昇華し、世界に普及させる解決策を提案できる。

幅広い産業機械の製造の実績とノウハウ

電力、製鉄、鍛圧等の幅広い領域で、高精度な速度・位置・圧力制御を行う高圧大容量油圧システムを手掛けた実績を有する。港湾物流の改善に必要となる製品の設計/製造に関して、ハードウェアの観点で解決策を提案できる。

ロボティクスに関するナレッジ

動力源となる油圧システムの設計・製造のみならず、近年取組んでいるヒューマノイドロボット用油圧アクチュエーターの技術開発力を最大限に活かし、油圧機器とデータを連携させた自動化やロボティクス化を追求することで、安全・安心なスマートポートの実現に向けた提案ができる。

世界最高レベルの品質を誇る量産技術

世界中の大手産業機械メーカーの厳しい要求水準をクリアし、変化するニーズに対して、柔軟に生産量を調整し、安定供給を続けてきた。港湾物流に必要となる製品を、安定した品質で大量生産に繋げる解決策を提案できる

機械工学と電気工学のプロフェッショナルチーム

機械工学、電気工学の両分野に専門性の高い人材を有しており、コンピュータによる電気的な信号から、あらゆる大きなものを動かす機械設計まで、一貫して開発チームを組み対応できる。

水素燃料のコントロールに関する知見と実績

高圧ガス制御用バルブに関する油圧機器製造の知見を活かし、水素燃料電池車向けのバルブの開発・製造を行い、海外大手自動車メーカーに供給している。次世代のエネルギー源として期待される水素燃料を扱う知見を有しており、共創パートナーと共に高圧水素ガスを用いたエネルギーサービスの提案ができる。

港湾ステークホルダーとの広範な関係資本

国内外の船舶・搬送・陸上輸送等におけるステークホルダーとの良好かつ重層的な関係資本を活用して、総合重機メーカーである当社だからこそ実現可能な製品/サービスをグローバルに提案することが可能である。また、社会インフラに直結する輸送機器/装置に当社製品が広く採用されているのは、ひとえに製品を通じた安全と安心の追及を社是としてきた当社の組織風土に依るところが大きい。これは顧客企業からも広く認知され、これまで100年以上にわたって培われた「Kawasakiブランド」として高く評価されている当社の重要な組織資本である。

Potential Partner
どのようなパートナーとCo-Creation(共創)したいか?

以下に該当する海外プレイヤーを中心に(日本のプレイヤーも可)、共創パートナーを募集する

貨物を管理する運送会社・倉庫会社、港湾運営会社、政府機関、インフラ系企業、港湾設備を提供する産業機械メーカー

  • 現在、既存港湾設備の効率性や耐久性、作業者や環境に対する安全性、あるいは既存の運営体制に課題を抱えているが、現状の技術的制約やブレークスルー不足がそれらの改善の障壁となっているプレイヤー
  • 水素や電気等の持続可能なエネルギーを活用することで、港湾における環境負荷の低減や港湾周辺地域を活性化させる新たなソリューションを求めるプレイヤー

港湾において活用できるテクノロジー/アイデアを有するプレイヤー

  • 現状を打開するアイデアやシステムを有しているものの、ハードウェアとの融合の手段がなく具体的なソリューションにつなげることに課題を抱えているプレイヤー
  • 川崎重工との共創活動を通じて、これまでに提案が困難であった港湾サービス、顧客へのアプローチを実現したいプレイヤー
  • 倉庫業務・陸上輸送・港湾荷役等の領域に自動化のソリューションを提供するシステム系プレイヤー(スマートポートに関与するSIer)

その他、上述の目的・課題に共感し、持続可能なスマートポートを実現するという未来を共創したいあらゆるパートナーを求める。

Asset
チャレンジオーナーによる提供アセット

世界に広がる顧客&サプライヤーネットワーク

世界に広がる顧客&サプライヤーネットワーク

建設機械、産業機械、船舶機械分野において、世界中のお客様に長年に渡り製品&ソリューション提供を通じ、信頼関係を築いてきた。また、これを実現する為の油圧機器の設計・SI・販売で密に連携してきたサプライチェーンや販売店網を有する。港湾物流における共創パートナーの革新的な技術やアイディアとco-createし、ハードウェアに落とし込み、総合的なソリューションを共に世界に提案する。

機械・電気技術のプロフェッショナルチーム

機械・電気技術のプロフェッショナルチーム

機械工学、電気工学の両分野に専門性の高い人材を有し、機械に対する電気的な指令からあらゆるものを動かす為の機械的なアクチュエータ設計まで機電一体で一貫した開発チームを組む事ができる。また、製品の高信頼性と高性能化を支える高度な解析技術と制御技術を有する。

  • 解析技術:動的挙動解析、FEM、CFD、等
  • 制御技術:ソフトウエア、IoT対応、制御基板、等

電油アクチュエータの活用に関する知見と実績

電油アクチュエータの活用に関する知見と実績

近年、動力源となる油圧システムの設計・製造のみならず、電油アクチュエータの開発に取り組んでいる。この技術開発を最大限に活かし、油圧機器とデータを連携させた自動化やロボティクス化を追求することで、安全・安心な港湾の実現に向けた提案ができる。

世界最高レベルの品質を誇る量産技術

世界最高レベルの品質を安定供給する量産技術

世界中の大手建設機械、農業機械メーカーの厳しい要求水準をクリアし、日々変化するお客様の需要数に対して柔軟に生産量を調整し、製品の安定供給を続けてきた。スマートポート実現に必要となる車両/設備用コンポーネントを安定した品質で大量に提供することができる。

水素燃料のコントロールに関する知見と実績

水素燃料のコントロールに関する知見と実績

従来の高圧ガス制御用バルブの知見を活かし、現在水素燃料電池車向けバルブの開発・製造を行い、海外大手自動車メーカーへ製品を供給している。この開発を通じ、次世代住環境のエネルギー源として期待される水素燃料について知見を有しており、将来のスマートポートにおいて、共創パートナーと共に高圧水素ガスを用いたエネルギーサービスの提案ができると考える。

幅広い産業機械の製造実績とノウハウ

>幅広い産業機械の製造実績とノウハウ

産業機械分野では電力、製鉄、鍛圧等、幅広い領域で高精度な速度・位置・圧力制御を行う高圧大容量油圧システムの納入を手掛けた実績を有する。港湾で使用される各種物流機械に際して、ハードウェアの観点で解決策を提案できる。

舶用機械分野(掲載:舵取機、甲板機械)

舶用機械分野(掲載:舵取機、甲板機械)

油圧舵取機は油圧ポンプ・油タンク、電動機、ラムその他配管などによって構成された船舶の操船を担う重要な装置です。

舶用機械分野(掲載:舵取機、甲板機械)

甲板機械は、油圧モータの回転力を機械に与えて、船の錨を巻き上げるウィンドラスや、船を岸壁に係船する際に使用するムアリングウインチなどがある。これら当社の舶用機械は、その高い信頼性と長い運用実績から、世界中を航行する各種商船に広く採用されている。

建設機械分野(ショベル)

建設機械分野(ショベル)

精密機械ディビジョンは油圧ショベル黎明期である1960年代からこの分野に本格的に進出。以来ショベルの巨大なパワーの源となる油圧ポンプ、その力を仕事に変える油圧モータ、さらにこれらを自在に制御するマルチコントロール弁や各種パイロット弁に加え、油圧システム全体を制御するECU(電子コントローラ)を相次いで開発、全世界で稼働する油圧ショベルの多くに採用されている。

建設機械分野(クレーン)

建設機械分野(クレーン)

クローラ/ラフテレーンクレーンの油圧システムには、強大なパワーと高度な制御に加え、非常に高い信頼性を要求されている。当社のポンプ、巻上げモータ、メインコントロールバルブ、パイロットバルブは、それら厳しい要件を満たすコンポーネントとしてクレーン各社に広く採用されている。

Hydro Static Transmission (HST)

Hydro Static Transmission (HST)

Hydro Static Transmission (HST)システムは低速走行時の高トルク出力や前後進の繰り返し動作を必要とするホイールローダやクローラドーザ、テレハンドラ、コンバインハーベスタなどに適用されているスムーズな無段変速ドライブシステム。
港湾機械に求められる精密な走行/位置制御に最適なソリューションである。

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